本記事では、
ナチス映画『フィリップ』のラストシーンについて、結末やその意味についてまとめています。
※好き勝手に考察しています。
フィリップ(映画)のあらすじをおさらい
フィリップはユダヤ人です。
1941年、ゲットーで、婚約者と、家族を失いました。ナチスに突然銃殺されたのです。
フィリップは、愛する人全てを一度に失いました。
そして2年後の1941年。
フィリップは、ドイツのフランクフルトにある高級ホテルで、フランス人と身分を偽って生活していました。
フィリップは、ドイツ人の女性を次々と誘惑し、からだの関係をもっては、捨てる、を繰り返していました。
フィリップにとって、彼女たちを娼婦のように扱うことは彼なりの復讐でした。
ふたりは程なくして両思いになり、共にパリに駆け落ちすることを約束します。
果たしてふたりの運命はいかに―――。
というのが、『フィリップ』の大まかなあらすじでした。
フィリップ(映画)の最後のラストシーン・結末をネタバレありで紹介
フィリップのクライマックスの劇的展開は、フィリップの同僚で親友のピエールが、ナチスに銃殺され、無惨な死を遂げるところから始まります。
フィリップとピエールは、勤め先であるホテルから、度々ワインをくすねていました。
そうしている内にいよいよ従業員の中に盗人がいるようだぞ、ということになり、ナチスは、抜き打ちで従業員のロッカーを調べにきたのです。
間が悪く、ピエールのロッカーにはワインがしまわれていました。
ナチスは、意地悪そうな笑みを浮かべると、ピエールにそれを開けるように指示し、5秒でそれを飲み干すように促します。
ピエールは、言われた通り、ラッパ飲みを始めます。
まるでこれから何が起こるのか予期しているように、顔面は蒼白で、とても味わえているようには見えません。
ナチスの5秒のカウントダウンが終わると同時に、ピエールは、頭を撃ち抜かれてしまいました。
フィリップは激しく動揺します。
ナチスに向かって「おれをころせ!おれはポーランド人だ!ユダヤ人だ!」と怒りながら告白するも、ナチスからは親友を失い気が狂ったものと思われ、同情されてしまい相手にされませんでした。
フィリップは、夜に狂ったように声を上げて泣きました。
眠れない夜は運動するのがフィリップの日課だったのですが、その日は、からだを動かしてもとても気を紛らわすことはできなかったようです。
後日フィリップは、リズを訪ねました。
そして次のような内容でリズに別れを告げました。
「君はここに残る。パリにはひとりで行く。君を捨てる。初めてプールで君を見たときから、君を娼婦にしてすてるのが計画だった。ピエールが証人さ。君にはもう飽きた」
リズは「どうしてそんなウソをつくの」と悲しみましたが、フィリップの心が変わることはありませんでした。
そしてフィリップの勤めるホテルでは、ナチス将校の結婚を祝う、盛大なパーティが開かれました。
幸せそうな新郎新婦に、たくさんの客。右手をピンと斜め上に上げながら(ナチス式敬礼)ナチス・ドイツを讃える歌が合唱され、パーティ会場内に響き渡りました。
フィリップはその光景を、グラスが乗ったお盆を両手に、不思議そうに静観しているようでした。
フィリップは途中会場を抜けると、マルレーナらに暗殺されたらしい恐らくナチスの遺体が床に横たわっているのを目にします。
フィリップは次にその遺体から銃を取ると、パーティ会場を見下ろすことのできる階上まで歩いてやってきました。
屈んでプランターの茂みをかきわけると、その間から、階下で陽気にダンスを踊るドイツ人目掛けて、銃を発砲しました。
女性に子供、フィリップは無差別に殺傷を続けました。
人々はダンスで盛り上がっていた為に、初めは人が撃たれて倒れていることに気がついていませんでした。
が、じきに気が付いて大パニックに陥ります。
フィリップは5人程を撃ったところで、玉切れしたのか、撃つことをやめると銃をプランターに置いて、そのままホテルを後にしました。
フィリップは何も感じていないようでした。
駅に着くと、ブルッチュが偽造してくれたパスポートのみを手に、パリ行きの列車が来るホームへと、姿を消していきました。
フィリップ(映画)の最後のラストシーン・結末をネタバレありで考察
場面画像の説明:
フィリップに心を許し自分がユダヤ人と告白し、リザを心配するフィリップと、
フリップを受け入れるリザ
考察①なぜフィリップはリズに別れを告げたのか
監督がいうに、
フィリップは、
愛する人(ピエール)を失ったことで、
自分は恋愛をしている場合ではないのだと、愛への憧れを破壊した為に、または破壊する為にリズに別れを告げたようです。
Nie jest to także film o miłości. „To jest film o braku miłości, jej potrzebie i tęsknocie do niej.” – przyznaje reżyser – „Filip podejmuje rozpaczliwe próby zakochania się, ale okoliczności (śmierć przyjaciół wokół) nie pozwalają na uczuciowe zatracenie się. To nie jest czas na miłość – mówi mój bohater. I postanawia zniszczyć uczucie, do którego dążył.”
https://legalnakultura.pl/pl/czytelnia-kulturalna/polecamy/news/3861,filip-film-ktory-trzeba-zobaczyc#gsc.tab=0
↓
(和訳)また、これは愛についての映画ではありません。「これは愛の欠如、愛の必要性、そして愛への憧れについての映画です。」 – 監督も認める – 「フィリップは恋に落ちようと必死に努力しますが、状況(周囲の友人の死)が彼を感情的に失うことを許しません。今は恋をしている場合ではない、と私のヒーローは言います。そして彼は、自分が追い求めてきた感情を破壊することを決意するのです。」
フィリップがリザに別れを告げた理由として、例の復讐心からか、あるいは女性好きからか、冒頭でピエールの気に入っていたブランカに手を出したという負い目もあったかもしれないですよね。
これ以上大切な人を失いたくないという気持ちもあったかもしれません。
ピエールは、本当に気の良い友人でした。
自暴自棄になっているフィリップに「食べるものがあるだけで良い。戦争が終わって平和になったときのことを考えよう」などと言って声を掛けたり、
彼のことを心から心配していましたし、
彼がリザと結ばれパリに脱出することになったときには、大喜びしていました。
そしてピエールは、ナチスに殺されることを手が震えてしまうくらい怖がっていました。
そんなピエールが、夢に描いた平和を味わうこともなく、恐れていたようなやり方で命を奪われることになってしまったのです。
フィリップのショックは相当なものだったでしょう。
フィリップがパーティ会場で狂ったよう大泣きしていましたが、
どんなにうるさくしていても、もう「うるさい」と怒りにくるピエールがいないことをきっと思い知らされていたでしょう。
ワインを盗んだ、それだけの理由でころされてしまうのは、ナチスがユダヤ人らから莫大な資産と命まで略奪していたことを考えると、余計に理不尽ですよね。
フィリップは、愛する人たちの命をナチスに無惨な形で奪われてからというもの、ずっと過去にとらわて生きてきました。
それが、リズと出会ったことによって、過去を捨てて1からやり直したいとそう思うことができた矢先に、大切な人をまたナチスに奪われてしまいました。
フィリップは劇中で"心を許せる人はいない"と言っていたように、初めはピエールにも心を開くことができていませんでした。
それが、リザと出会い心が安らいだことで、余裕ができたか、ラストはピエールとハグをしたり、ブランカにも「やさしくなったね」と声を掛けられていました。
それなのに残念ですよね。
考察②フィリップはなぜドイツ人に発砲したのか
もう自分が捕まっても殺されてしまっても、
心底どうでも良くなってしまったようです。
ピエールが銃殺されたときには、
「ころせ」とナチスにかみつきました。
フィリップはそれまで、
ドイツ人の女性を辱めようとも、
命を奪うことまでは考えていませんでした。
それは、冒頭でに勧められた挙銃を拒否したことにも表れています。
それから、フィリップはいくら自暴自棄になろうとも、
生きようとしていました。
秘密警察にドイツ人の女性と寝ただろうと問い詰められ殴られても、
嘘を付き通しました。
それがピエールを失い、
無双状態になってしまったのでしょうか。
ナチスに捕まろうが特に構わないとでもいうように、
犯罪現場から、急ぐ様子もなく駅に向かって歩いていきました。
しかし気が触れてしまったように見える前には、
同僚との別れを惜しむように挨拶しているシーンもありました。
彼は完全に壊れてしまったわけではないと、思いたいですね。
フィリップはなぜ無差別に発砲したのか
それはやはりナチスが無差別にユダヤ人を虐殺してしまうからでなのしょう。
女性もユダヤ人やポーランド人をバカにしていて、
子供も唾を吐きかけるなどしていました。
子供が子供として扱われなかったこの時代、
女子供関係なく、ドイツ人全体が復讐の対象でした。
フィリップがその後どうなったのかをタバレありで考察
考察③フィリップはその後どうなったのか
フィリップが向かった先、パリも、1942年11月から全土がドイツの占領下にありました。
つまり、フィリップが向かった先にも自由など待っていなかったのです。
映画『フィリップ』が、原作小説『フィリップ』の著者であるレオポルド・ティルマンドの体験に基づいた話であることを踏まえて考えると、
フィリップは、パリで強制収容所に収容され、終戦までそこに留まったのではないか。
レオポルド・ティルマンドは、ドイツでフランス人として様々な仕事をした後の1944年、今度はドイツ船の船員として、中立国であるスウェーデンに渡ろうとしたそうです。
しかしノルウェーのスタヴァンゲル港で逃亡したところを捕らえられ(ノルウェ当時もドイツの支配下似あった)、後にオスロ近郊のグリニ強制収容所に収容され、終戦(1945年5月17日)までそこに留まったということです。
行動力がすごいですよね。
ということで、フィリップのその後があるのだとすれば、原作者と同じように捕らえられて収容所で終戦を迎える、と考えるのが最も妥当ではないでしょうか。
レオポルド・ティルマンドは終戦後1966年にアメリカに移住し、アメリカ人の妻(メアリー・エレン・フォック)と結婚し、ふたりの子供(マシュー・ティルマンド、レベッカ)も授かったということです。
前妻も2人いたということですので、恋多き人生になったようですね。
原作者妻
マーガレット・ルブル=ジュロフスカ(1955年 – ?)
Wikipedia(https://en.m.wikipedia.org/wiki/Leopold_Tyrmand)
バーバラ・ホフ(1957年 – 1965年)
メアリー・エレン・フォックス(1971年 – 1985年)
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