※字幕吹き替えなしを観た状態なので、もしかしたら解釈に違いや誤りがあるかもしれません。ご了承下さい。また観て必要あれば更新します。
『お隣さんはヒトラー?』あらすじ・結末ラストシーン・正体をネタバレありで詳しく
舞台は、第二次世界大戦が終わって15年後、1960年の南米のコロンビアです。
デヴィッド・ヘイマン演じるマレク・ポルスキーは、ホロコーストの強制収容所で家族を失った、孤独な老人です。
彼は少し人間嫌いのようで、人里離れたところに住んでいて、彼と世間を繋いでいるのは新聞配達の若者と新聞だけのようでした。
そんなマレク・ポルスキーの唯一の楽しみは、亡き妻が大切に育てていた黒いバラの世話をすること。
妻がかつてそうしていたように、卵の殻を潰しては、肥料として根本にまいてやります。
そうした後には、彼の心には束の間の平安が訪れるようで、心穏やかそうに微笑むのでした。
しかし彼のそんな平安な日々は、隣の空き家に人が越してきたことで、崩れていきます。
隣人が越してきた翌朝、彼が大切に育てているバラの花の茎が折れていることに気が付きます。
そして根元には糞と、隣家との境界線である一部壊れたフェンスの向こうに吠える犬。
どうやらバラを荒らした犯人は、隣人の飼い犬らしいのでした。
マレク・ポルスキーは、新聞紙にくるんだ糞を手に、すぐに隣の家に抗議しに向かいました。
しかし隣人であるウド・キア演じるヘルマン・ヘルツォークは、非を認めません。"それはあなたの糞かもしれない"と言うのです。
更に悪いことに、家の敷地の境界線に問題があったらしく、両家の境界線であるフェンスの移動工事が行われました。
それによって、マレク・ポルスキーの可愛がっているバラは、ギリギリ隣の家の敷地のものになってしまいました。
バラがきちんと世話されるか心配したマレク・ポルスキーは、ヘルマン・ヘルツォークにバラの花の説明書を渡しに向かいました。
(このときマレク・ポルスキーは、ヘルマン・ヘルツォークの車に尿をひっかけるという嫌がらせをします)
しかし家から出てきたヘルマン・ヘルツォークは、"花に水をやるのに指導はいらないし、それは黒いので花ではない"と突き放します。
するとヘルマン・ヘルツォークがかけていたサングラスが地に落下しました。
ヘルマン・ヘルツォークの素顔が明らかになったとき、マレク・ポルスキーは驚き、すくみ上がりました。
なぜならヘルマン・ヘルツォークは、アドルフ・ヒトラーと同じ、青い死んだ目をしていたからです。
マレク・ポルスキーは、ホロコーストが起こる前、1934年に行われたチェスの大会に出場したことがあり、そこでアドルフ・ヒトラーと目が合ったことがあったのです。
マレク・ポルスキーは、実はアドルフ・ヒトラーは生きていて、ヘルマン・ヘルツォークこそが彼その者なのだと確信し、強いショックを受けます。
数日前には、アルゼンチンの主知ブエノスアイレスで、アドルフ・アイヒマンが捕らえられたばかりでした。
アドルフ・ヒトラーは、それで身の危険を感じ、隣に越してきたに違いないと、マレク・ポルスキーは考えました。
マレク・ポルスキーはすぐにイスラエル大使館に、ヒトラーが実は生きていて、隣に越してきた男がそうなのだと説明しますが、しかし彼らはまるで相手にしてくれませんでした。
イスラエル大使館には、"ヒトラーを見た"との報告が、毎年20件は寄せられていた為です。
マレク・ポルスキーは、彼らになんとかして隣人がヒトラーであることを証明しなければなりません。
マレク・ポルスキーは本屋に寄ってアドルフ・ヒトラーの関連書籍を買い求めると、それを読み込み、そしてそれを切り抜いていくつも壁に貼りつけました。まるで彼の大ファンでもあるかのように。
マレク・ポルスキーは、自宅の小窓から隣人を本格的に監視することを始めました。
そうした結果、隣人はヒトラーと同じ身長で左利きで、アマチュアの画家であることが分かりました。
他にも、犬好きや癇癪持ちなどの共通点があります。
しかしそれでもイスラエル大使館を納得させることはできず、言い合いになってしまいました。
そして後日。
マレク・ポルスキーは、隣の家の境界線であるフェンスに梯子を立てかけるとそれに上って、フェンス越しにバラに水をやりを始めます。
ヘルマン・ヘルツォークは、ガーデンテーブルセットに腰掛けていて、マレク・ポルスキーには背を向けた状態でひとりチェスをたしなんでいましたが、犬が吠え始めた為、マレク・ポルスキーの存在に気が付きます。
彼らはいつものごとく言い争いになります。
チェスの盤を見たマレク・ポルスキーは、口で駒を動かすと、「チェックメイト!」と言い残して去りました。
ヘルマン・ヘルツォークは驚いた様子でした。
翌日。
ヘルマン・ヘルツォークがマレク・ポルスキーを訪ねてきました。"コーヒーはありますか?”
2人は、チェスをすることになりました。
マレク・ポルスキーがヘルマン・ヘルツォークを招き入れ、
昨日のチェスの続きを始めます。
結果はマレク・ポルスキーの勝利で、ヘルマン・ヘルツォークは癇癪を起しましたが、ヘルマン・ヘルツォークは、マレク・ポルスキーとチェスをプレイし続けることを望みました。
次にチェスで対戦したのはヘルマン・ヘルツォークの家でした。
彼の家はたいそう立派でした。
そして壁には彼が描いたと思われる絵画が飾ってありました。
マレク・ポルスキーは、チェスの途中で"トイレ"だと言って、わずかな時間、彼の家を物色します。
ヘルマン・ヘルツォークは、別れ際に「ゲームをありがとう」と言って、マレク・ポルスキーに手を差し出しました。
マレク・ポルスキーはこれに応えましたが、
帰宅すると、手を念入りに洗いました。
そして夜になると、マレク・ポルスキーはフェンスの壊れた一部から隣家に忍び込み、絵画を盗ろうとします。
しかし犬に吠えられた為失敗。
追いかけてきた犬を殴って殺してしまい、殺してしまいます。
ヘルマン・ヘルツォークは、愛犬を失ったショックから、翌日マレク・ポルスキーの家を訪ねてきたものの、チェスはたしなまず、酒を飲み、過去に美術を勉強していたことだとか、そういう話をして過ごしました。
(マレク・ポルスキーは、ヘルマン・ヘルツォークに"あなたの絵を描く、あなたはハンサムだ"と言われ、その日意識して鏡の中の自分を見ることになりました)
そして後日、マレク・ポルスキーは、自身の愛する黒いバラを背景に、ヘルマン・ヘルツォークに絵を描いてもらいました。
完成した優しい美しい絵を見て、ヘルマン・ヘルツォークは驚いたようでした。
「笑って」と言われて笑ったヘルマン・ヘルツォークが、絵の中で優しく微笑んでいました。
後日またふたりはマレク・ポルスキーの家でチェスをするのですが、ヘルマン・ヘルツォークが酒を飲みすぎてしまい、嘔吐してしまいます。
マレク・ポルスキーがその介護にあたり、ヘルマン・ヘルツォークは「ありがとう」と礼を言います。
日が暮れるまで2人は共にいて、
庭のベンチで、ソーセージを食べました。
ヘルマン・ヘルツォークは、マレク・ポルスキーに"良いユダヤ人"だと言い、"いつでもバラに水をやりにきてかまわない"と告げます。
険悪だった2人の間には、いつしか、奇妙な友情が芽生えていたのでした。
ヘルマン・ヘルツォークが帰った後、
マレク・ポルスキーの中に、(彼はもしかしたらヒトラーではないのかも?)という考えがよぎります。
しかし小窓から、隣の家を訪ねてやってきた男が、「ヒトラー、万歳!」とヒトラー式の敬礼をして叫んで連れの男に注意されているのを見ると、マレク・ポルスキーの血相は一瞬にして変わります。
木枠に張り込まれた絵画をナイフで四角く切り取ると、それを筒状に丸めました。
翌日イスラエル大使館に証拠として提示しに行く為でした。
そして翌日マレク・ポルスキーは、イスラエル大使館に尋ねていきましたが、この日もまたいつもと同じことでした。
ヘルマン・ヘルツォークは、犬がフェンスの壊れた一部を潜り抜けて隣の家の敷地に入っていったので、その後を追おうと、自分もフェンスを潜り抜けました。
そして気が付いたのです、マレク・ポルスキーの家の小窓にビデオカメラが設置されており、彼が盗撮していたことを。
2人は乱闘になりました。
ヘルマン・ヘルツォークは最初に飼っていた愛犬を殺したのもマレク・ポルスキーだと知り、
マレク・ポルスキーに対して"モンスター"だと罵りました。
マレク・ポルスキーもマレク・ポルスキーで、
ヘルマン・ヘルツォークに愛する家族を奪われたことを嘆きました。
一旦2人は離れましたが、
マレク・ポルスキーはその後ヘルマン・ヘルツォーク宅に忍び込みました。
犬が見ていましたが、マレク・ポルスキーに吠えることはしませんでした。
犬の目に、ヘルマン・ヘルツォークと互いの家を行き来していたマレク・ポルスキーは、侵入者には映らなかったのでしょう。
結末、ラストシーン(正体ネタバレ有り)
ヘルマン・ヘルツォークの家に忍び込んだマレク・ポルスキーは、
シャベルを手に、ヘルマン・ヘルツォークを追い込みます。
しかしヘルマン・ヘルツォークの主張は、
ヒトラーの筆のタッチに至るまで、彼を完璧にコピーした偽者だというのです。
マレク・ポルスキーは取り乱しながら、"脱いで睾丸が1つしかないか見せろ"と指示します。
(ヒトラーは睾丸が1つしかないといわれていた)
ヘルマン・ヘルツォークは"クレイジーだ"と言いながらも、
そうしてみせました。
すると、それを目にしたマレク・ポルスキーは、ショックを受けた様子で、ヘルマン・ヘルツォークの膝の上に泣き崩れました。
そして後日。
何の心変わりか、
イスラエル大使館がマレク・ポルスキーの自宅を訪ねてきてきました。
というのも、隣人を本格的に調査してみる気になったというのです。
なぜかというと、彼らいわく、
隣人とヒトラーの筆のタッチとが同じであったこと、
そして"プロの勘"が働いたが故の結果でした。
マレク・ポルスキーは"自分の妄想だった"と必死で抵抗しました。
が、これまでもそうであったように、彼らは聞く耳をまるで持ちません。
マレク・ポルスキーは、彼らが一旦帰宅した後でヘルマン・ヘルツォークを訪ねると、
ヘルマン・ヘルツォークが彼らに捕らえられることがないよう、イスラエル大使館の人があなたを調べにくるということを告げました。
よってヘルマン・ヘルツォークらは、
イスラエル大使館の人がやってくる前に、
車に乗って、マレク・ポルスキーの隣の家から出ていきました。
マレク・ポルスキーは彼らを見送る際に、
黒いバラをいくつかカットして、
ヘルマン・ヘルツォークにプレゼントしました。
2人はハグをして別れを告げました。
マレク・ポルスキーの手には、
ヘルマン・ヘルツォークが可愛がっていた2匹目の犬の綱が握られており、
彼は犬を撫でました。
『お隣さんはヒトラー?』ネタバレあり感想
『お隣さんはヒトラー?』は、カテゴリとしては、コメディ&ヒューマンドラマといった印象でした。
マレク・ポルスキー演じるデヴィッド・ヘイマンと、
ヘルマン・ヘルツォーク演じるウド・キアの演技が素晴らしく、
まるで本当に実在している人物を見守っているようで、
その世界観に酔いしれることができました。
ウド・キアの目には、確かに1度見たら忘れることができないような、なんとも言い難いパワーを感じますよね。誠に適任であったと思います。
ウド・キアは、過去にも映画『アイアンスカイ』でヒトラーを演じたことがあることでも話題になりました。
マレク・ポルスキーとヘルマン・ヘルツォークは、
互いに良い大人ですが、双方がお大人げなく、
まるで子供のような、おじいちゃんのやり合いが、
見ていて微笑ましくなります。
とはいっても、現実に起こっていたら、つまりスクリーン越しでなかったら、険悪さに耐え難いのでしょうが。
しかし当時の手作り感ある時代の良さというか、例えば肥料には卵の殻を使ったり、ゲームといえばチェスだったりといったことが、彼らの言い争いをマイルドに見せているようです。
マレク・ポルスキーのバラを慈しむ姿には、心和ませられるものがありましたね。
マレク・ポルスキーにとってバラは、一緒に生き残ってくれた唯一の家族のような存在だったのだと思います。
結果、マレク・ポルスキーとヘルマン・ヘルツォークの2人は、チェスを通じて距離を縮めることになるのですが、
共通の趣味は強いですね。
2人は、過去にトラウマがあゆ孤独な者同士、
良き隣人になれそうでした。
年齢を重ねてからの友人は貴重ですよね。いつかはまた再開してもらいたいものです。
『お隣さんはヒトラー?』は、ナチス映画というより、
心にトラウマを抱える老人の友情の物語であり、
赦しの物語でした。
ナチス崩壊から90年近くが経つ今、
ホロコーストの直接的被害を被った人の中で、
今も生存している人はそういないでしょう。
だからこそ制作できた映画のようにも思いました。
それが悪いということではないですが、
物語からは、ヒトラーに対する愛情のようなものすら感じられたからです。
人を許すことは、自分自身を憎しみから解放して楽になる唯一の手段であると思います。
ですがそうはいっても、第3者が良かれと思ってそれを当事者にすすめることは、
その人を軽んじているように思います。
結局、隣人は何者なのか、ヒトラーなのか、そうでないのか、分かりませんでした。
ヒトラーに本当に睾丸がひとつしかなかったかどうかなど、証明のしようがないからです。
しかし確かなのは、ヘルマン・ヘルツォークは過去を後悔しているということ、そして人間味のある人物だったということです。
それだから、マレク・ポルスキーは彼と友人になり、彼を許したのでしょう。
そして最後2人は、ハグをし、互いに大切なものを交換しあいました。
初めは手を繋ぐことすら嫌悪していたことを思うと、感慨深いですよね。
当然のことですが、その人を理解する上で、その人を知ることは大切ですね。
マレク・ポルスキーは作中で犬嫌いだと言っていたのですが、その犬嫌いもどうやら克服することができたようです。
マレク・ポルスキーはせっかくチェス相手ができたのに、残念にも思いますが、これからは犬が彼の新しい家族になってくれるでしょう。
そうしたらこれまでよりきっと生活が色づくはずです。
そんなマレク・ポルスキーと犬のこれからの穏やかな生活のことを思うと、幸福な気持ちになります。
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